ダウン症の方のためのエクササイズとダンス遊び

ダウン症のある方のために考案された「エクササイズ」 と、決まった振付のない自由に踊れる「ダンス遊び」。ダウン症の魅力に磨きをかけてみませんか?

予告編


このDVDの目的


 ダウン症の方は、生まれながら人ぞれぞれ様々な身体特性(体質、合併症など)を持っており、それによって運動機能の発達遅滞が生じる傾向があることはよく知られています。中でも 身体(筋肉)の低緊張(註1)は、ダウン症の方に共通した、運動機能に影響を与える身体特性の代表例と言えます。 
  そんなダウン症の方の低緊張の身体(筋肉)は、青年期を過ぎると今度は硬くなっていきます。それに伴い運動機能は、30代~40代を過ぎると低下していき、壮年期になると運動する機会が極端に減り、単調な生活パターンになりがちで、肥満や疲れやすさを訴える方も多くいます(註2)
  ダウン症の方たちの身体のライフ・サイクルは、私たち健常者よりも発育・発達が遅く、衰え(老化)が早いとも指摘されます。運動をすることによって、児童、青年期の身体作りや、成人期、壮年期の身体の健康を維持していくことは、ダウン症の方々の生涯において大きな課題と言えます。
 一方、ダウン症の方たちは、明るく朗らかで、人なつっこく感性豊かという精神特性を持っています。中でも表現活動に長け、音楽、リズム、ダンスを好むことはよく知られています。それらはダウン症の方々の長所、魅力と言ってもいいでしょう。

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 本DVDで紹介する「エクササイズ」は、遊びのように楽しみながら身体を動かし、ダウン症の方たちの生涯に渡る「体づくり」をサポートします。
 そして「ダンス遊び」は、ダウン症の方がすでにお持ちの長所と魅力、そのよい面に磨きをかけ、更に伸ばしていこうとするものです。

 「エクササイズ」と「ダンス遊び」の両方を通じて、ダウン症の方々の人生の質の向上、幸せに寄与したいと願い、このDVDは製作されています。    


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エクササイズ


 楽しみながら筋肉の維持と強化

 エクササイズは、児童期以上のダウン症の方々の身体に共通した、以下の脆弱性に対して、維持、強化を目的として、組み立てられています。

  1)身体(筋肉)の低緊張
  2)合併症による体力の低さ、動きの少なさ
  3)肥満傾向からの敏捷性の低さ
  4)平衡感覚(バランス能力)の低さ  

 エクササイズの最初は、「座って」行うことから始まります。 続いて「立って」エクササイズ、「歩いて」エクササイズへと進行していきます。
 「座る→立つ→歩く」という、心臓への負担が少ない自然な流れの中で、徐々に心拍数をあげ、小さな動きからダイナミックな動きへと段階的に運動が変化していくように構成されています。

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  ダウン症の方の苦手な動きでも楽しみながら取り組めるよう、タンバリンや音楽を用いた内容になっています(タンバリンがない場合は、鈴やお菓子の缶など、音の出るものなら何でもご使用になれます)。
 ダウン症の方に関する運動研究では、音楽を使用すると高い効果が得られるという結果や事例が多く報告されています(註3)。また、グループ(多人数)で音楽と運動を結びつけた活動をすると、言語分野に伸びがみられるという結果も報告されています(註4)

 是非、楽しんて動くことをテーマにエクササイズしてください。上手にできたできないといった結果は、問題ではありません。くれぐれも訓練や鍛錬のようなムードにならないように配慮してください。身体を使った遊びのように、楽しんで身体を動かすことが一番大切です。
 エクササイズ所要時間=約10分。


ダンス遊び


  ダウン症の魅力に磨きをかける
 ダウン症の方といっても、その身体性の個人差は幅が広く、様々な体質、合併症のダウン症の方がいます(註5)。例えば、好きなダンスを踊ろうとしても、既成のダンスには決まった振付があります。ダウン症の方は、その身体性ゆえ(註6)、そんな振付を体現することが難しい方が多く、既成のダンスを楽しめるのは 一部のダウン症の方たちに限られてしまうのが現実です。

 このDVDで紹介する「ダンス遊び」は、すべてのダウン症の方が実施可能な「ダンス遊び」です。楽しみながら、ダウン症の方々の長所が更に活かされ、伸びていくように、以下の点を主眼に構成されています。

 1)自分で発想した自由な動きでダンスを楽しむ
 2)達成感、自己肯定感の強化
 3)個性と創造性を伸ばす
 4)ダンスを通じたコミュニュケーション能力の向上


 「ダンス遊び」には、決まった振付がありません。ダウン症の方たち個々の独特な身体の動きに価値と美を見出し、それをそのままダンスにしていきます。日常生活では否定されがちな身体の動きが、「ダンス遊び」の場では、その人にしかできないユニークな身体表現として肯定、受容され、それがダンスになっていきます。そんな場での彼らは、他では見られないイキイキとした姿を見せてくれます。


 「ダンス遊び」は、段階的に4つのテーマに分けられています。

①「基礎・ポーズでダンス遊び」
  ダウン症の方たちの得意とする動作、「ポーズ」を基本に、「ダンス 遊び」の基礎を楽しみながら作っていきます。一人一人のポーズを肯定し、音楽を流してダンスにしていきます。
   

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②「初級・マネしてダンス遊び」
 他者のポーズをマネすることにより、他者との間接的な関わりのダンスに発展させていきます。

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③「中級・モノとダンス遊び」
 モノを介して、他者との間接的な関わりのダンスを深めていきます。

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④「上級・人とダンス遊び」
 他者と直接的に関わるダンス遊びに発展させていきます。

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 そのままのあなたの動きが美しい。身体の動きをまるごと肯定される場で、今までに味わったことのない自己肯定感を味わうことになります。



DVDの内容


  DVDには、エクササイズとダンス遊びの「お手本」と「実際」の映像が収録されています。
 「お手本」映像は、このDVDを利用する健常者の方々へのお手本です。指導者や保護者の方々が、映像を見ながら学習したり、ダウン症の方と一緒にエクササイズとダンス遊びができるようになっています。

 DVDメニューには、「まとめ」のメニュー画面があり、内容項目が箇条書きで表示されています。項目を選択すると、該当する「お手本」映像が再生されます。
 ダンス遊びの「お手本」映像の場合、映像と一緒に動くタイミングが取りやすいように、カウント・ダウン画面から再生されます。ダウン症の方と一緒に動く際にご活用ください。
 「実際」映像では、ダウン症の方々が講師と一緒にエクササイズ、ダンス遊びしている現場映像(ケース・スタディ)がご覧になれます。実際にどのように行われているのか、参考になさってください。


使用する音楽について


  「エクササイズ」「ダンス遊び」、共にお手持ちのどんな音楽を使用していただいても構いません。参加する方の好きな音楽を使うのもいいでしょう。自由にお好きな音楽を利用してください。
 ・・・とは言っても、適切な音楽を見つけるのが苦手な方も多いことでしょう。そういう場合は、このDVDの「まとめ」メニュー画面をご活用ください。各項目ごとに、該当箇所が再生されます。
 「ダンス遊び」の場合は、動くタイミングが取りやすいように、先にカウント・ダウンが表示されるように設定されています。その音楽をBGMとして利用して動いてみてください。
 このDVDで紹介されている「エクササイズ」と「ダンス遊び」は、あくまで基本になるものです。実践する指導者、ダウン症の方、それぞれの個性に合わせて、臨機応変に、自由に発展させていただければと思います。

配慮事項


 ダウン症の方には、合併症を持つ方が多くいます。心臓疾患の合併症をお持ちの方には、呼吸の様子などに注意を払い、過度な運動にならないよう注意してください。
 また、頸椎不安定性(註7)の合併症をお持ちの方には、前転や長時間 上を向くなどを避け、首に負担がかからないように十分注意してください。



解説リーフレット


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 解説リーフレットが、無料ダウン・ロードできます。
 DVD内容の解説が、写真とともに文章化されており、DVD利用のサブテキストとしてご利用できます。

解説リーフレット Ver.2.0
クリック→      

クリックすると別画面に表示されます。上部にあるダウンロード・ボタンをクリックして無料ダウンロードできます。


批評記事


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冊子「生活の発見」Vol. 58-6・7 Jun・July 2016
(公益社団法人 日本女子体育協会 発行)
評者:伊藤美智子(大阪体育大学名誉教授)


  ↓クリックで拡大されます。

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クレジット

講師: 河下亜紀(>>プロフィール)
出演: 河下亜紀、いなもりようこ カモミール・ダンス・クラブの皆さん
エクササイズ、ダンス遊び・考案: 河下亜紀
音楽: HURT RECORD、柿堺恵 他
製作: 有限会社ランドスケープ
協力: HURT RECORD
カモミール・ダンス・クラブ
脚本・監督: 野中 剛
 


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脚註

註1: 「ダウン症の方は共通して、出生時から筋肉の低緊張の傾向が見られます。その影響により、生後からの平均達成年齢は、首のすわり=4ヶ月、寝返り=6~7ヶ月、ひとり立ち=11~13ヶ月、はいはい=12~13ヶ月、独歩=22~27ヶ月と、時間がかかります。
 その後児童期以降も、弱い筋力を姿勢や動き方で補おうとするため、偏った姿勢や動作をしがちになります」

(Melyn et al, 1973, 鈴木ら,1987 /外木秀文「ダウン症者の生涯を通じての健康管理について」 / 池田由紀江「ダウン症のすべてがわかる本」講談社、2007) 
註2: ◯菅野敦、池田由紀江「ダウン症の豊かな生活」 / 福村出版(1998)
註3: ◯菅野敦、池田由紀江「ダウン症の豊かな生活」福村出版(1998)
◯菅野敦、玉井邦夫、橋本創一、小島道夫「ダウン症ハンドブック(改訂版)」日本文化科学社(2012)
◯高橋八代江、吉田孝子「ダウン症の子供の身体を育てる」こやぎ文庫No.5 (1994)
◯平井伊都子「ダウン症幼児のコミュニケーションの発達における音楽療法の試み」 小林芳文、松瀬美千「音楽ムーブメント(ムーブメント教育実践プログラム第6巻)」コレール社(1988)
◯大橋さつき「特別支援教育・体育に活かすダンスムーブメント」明治図書出版(2008)  
註4: ◯石川郁子、飯村敦子、小林芳文「ムーブメント教育によるダウン症児の指導」横浜国立大学教育紀要32巻、241-261(1992) 
註5: ◯橋本創一 他「ダウン症の基礎的運動能力に関する横断的研究」  発達障害研究,第30回(1)39-51(2008)  
註6: ダウン症の方の身体性:筋肉の低緊張、敏捷性・平衡感覚の低さ、体力・動きの少なさ、心臓疾患などの合併症、全身協調動作の困難、反復動作の困難、振付記憶の困難 など。
註7:  頸椎不安定症:頸椎(けいつい)とは、背骨のうち首の部分の骨を指します。通常、頸椎はお互いの突起がかみ合って安定していますが、ダウン症の方では時に、一番上の椎骨が安定せず、2つ目の椎骨よりも前にずれやすくなる異常が見られます。
(池田由紀江「ダウン症のすべてがわかる本」/ 講談社 / 2007) 

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